2008年11月11日

<お話いろいろ> 赤い山・緑の谷 山を描く

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久木朋子さんの木版画展が11月12日(水)からはじまります。
久木さんの版画はモチーフに様々な山の様子が表現されています。雪を割って芽吹く木々、6色に輝く枝にさえずる小鳥、山登りで一服、休憩しているひと。どれも山に登れば見かけそうな一部分を木版画という技法で、描いておられます。

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『山では自分が歩いた分だけ前に進み、お腹がすいたら自分で担いできた食料を食べ、また歩き、疲れたらテントで休み元気になったらまた歩く。とてもシンプルで現実的でまわりの世界と自分が生きている事を実感できます。版画も自分の手でひと彫り、ひと彫りした板から色と形が出来上がる。何もないところから自分の手によってなにかが出来上がってくることがたまらなく愉快で結局ひたすら創りつづけてしまうんです。』

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もの創りはどれも地道な作業を伴いますが、木版画も当然そういった作業の連続なのだと思います。板を彫り、色の分だけ版を創り、紙に刷り、色を重ねる。。。1つ1つの作業の積み重ねが美しい作品を作り上げていくのですね。
 また、久木さんの作品の魅力は独特のモチーフと構図、特に新作は大きな作品が揃っています。温かみを感じる色使いが見どころです。


ぜひ、秋の赤い山、夏の緑の谷を楽しめる作品をご覧下さい。

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●久木朋子木版画展●
平成20年11月12日(水)〜24日(月) 最終日午後5時迄。
午前10時〜午後8時まで  (火曜定休日)
クラウンプラザ神戸 4階 ロビーフロア

THE GALLERY/田中美術

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2007年10月21日

蔵田美和日本画展 作家インタビュー

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ひと雨ごとに秋の深まる頃となりました。来る10月31日(水)より蔵田美和先生の展覧会を今年も開催する運びとなりました。新作の9点を含み、爽やかな自然を感じる作品の数々がギャラリーに揃います。 今回は作品展を前に蔵田先生より、作品の主役。豊かな自然に息づく草花についてお話を伺うことができました。まずは、作品にも登場するという可憐な草花のお話をご覧ください。


e0102155_18105168.jpgどこまでいっても山また山の岐阜県揖斐郡坂内。
そこには渓流のせせらぎとブナやトチの大木の、
深い森が広がっています。
そして、足下には四季折々の小さな植物たち。

今年も、坂内の小さな野草たちを題材にした作品づくりに取り組みました。
今回は、私の絵に登場するこの季節の植物たちを紹介したいと思います。



e0102155_1811939.jpg「アキチョウジ」(秋丁字)
山道の湿気の多いところに、青紫色の花をひっそりと咲かせています。
周りの空気に溶けてしまいそうな淡い小さな花はどこか儚げです。
花の形が香料のチョウジに似ていることからこの名前がついていますが、古名では、別に「桐壺」ともよばれます。
光源氏の生母、桐壺更衣の控えめな美しさに因んでつけられたと言われています。



e0102155_18112451.jpg「ヨメナ」(嫁菜)
一般には、野菊とよばれていると思います。
白に近い薄赤紫色の繊細な花は、枯野の中でひときわ美しく映えます。
名前の由来は、「鼠菜」「夜目菜」。
群生することから、夜活動する鼠に食べさせて、畑のナスは食べさせるな、という意味だそうです。
「嫁菜」があてられたのは、江戸時代に入ってから・・・
お嫁さんの菜っ葉・・・?やはりナスを食べさせるなと??
いえいえ、春の若菜はいろいろ効能の多い薬草になるのです。
お嫁さんの、体をいたわってついた名前なのでしょう。



e0102155_18114158.jpg「テンニンソウ」(天人草)
草丈が高く、大きな花穂をつけるので秋の山では目立つ植物です。
和名は天人草、大変美しい名前ですが、ちょっと花のイメージとは違うような・・と思っていたら、
実は、コガネムシは天人草の葉っぱが大好きなんです。
食い荒らされていない天人草には、まず出会えないといっていいほどです。
そのボロボロの葉を、天人の羽衣(破衣)とたとえたのだとか・・
それを知ってしまったら、ちょっと気の毒な名前に思えてきました。



e0102155_18115360.jpg「アキギリ」(秋桐)
山地の谷間の木陰でよく見られます。
紅紫色の美しい花から、長く伸び出たシベが特徴的です。
桐の花によく似ていることからこの名前がついていますが、
もっとそっくりなのは、サルビアです。
実は、日本には、野生のサルビアが大変多いのです。





e0102155_18121163.jpg「アキノキリンソウ」(秋の麒麟草)
秋に咲く黄金色の花の代表のひとつです。
直径10mmほどの小さな花を房状につけて明るい林の中で群生しています。
秋晴れの青空に大変よく似合います。
別名は、アワダチソウ(泡立草)、花穂を酒の発酵でみられる泡に見立てたのだとか。
ちょうど、花期とお酒の仕込みが本格的に始まる時期と重なるのでしょうね。



e0102155_18122757.jpg「フシグロセンノウ」(節黒仙翁)
夏の終わりの深い緑の中で、鮮やかな朱色はとても目を引きます。
とてもシンプルな形の花ですが、よく見ると大変美しい形です。
控えめな色の花が多いこの時期、山を歩いていて、
フシグロセンノウに出会うとちょっとうれしくなります。



e0102155_18124150.jpg「ヤマシロキク」(山白菊)
嫁菜によく似ていますが、こちらは林の奥の陰にひっそりと。
長く伸びた茎に、大きな葉っぱ、頂点に、ドームのように小さな花が密集して咲きます。
とても雰囲気のある植物です。





e0102155_18133792.jpg「?」
とうとう、名前がわかりませんでした。
セリ科の植物です。
しかし、どうでしょう。この隅から隅まで、ぬかりのない美しさ。
レースのような真っ白い花。この花を引き立てるためかのような、葉の形、そして、色。
見事としかいいようがありません。



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2007年02月23日

第3回 河井創太 陶展

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河井さんは変わらない人だ。
2年ぶりの個展を前にお話を伺いましたが、いつもの通り。平常心。
しかし、言葉の中には揺るがない、流されない、動じない…河井創太さんのスタイルが少し伺えた気がします。
3回目の個展に向け窯たき前のお忙しいところお話いただいた事をご紹介させて頂きます。

e0102155_17583679.jpg田中『2年ぶりの神戸での個展ですが、ひとこと…』
河井 『いつも通りです。(笑)』
田中 『今回はどんな作品が並ぶ予定ですか?』
河井 『作品としては器類から造形的な扁壷、壁に置く陶彫などの出品を考えています。』
 
河井創太さんはお名前、作風からもわかる通り、故・河井寛次郎さんのひ孫さんにあたられます。
現在、信楽に工房と居を置かれ、作業しておられます。
 
河井 『私は土を扱い器をつくっていますが、とりわけ造形に関心が強く、近年は時に造形的なところに向かっている感があります。』
 
確かに、寛次郎さんのスタイルや形がもとになっているにしろ、河井さんの造形は私たちが日常目にするものの“形”にはないもの、つまり“見慣れない形”“見たことがない形”が多い。この形はどこから生まれてくるのか。また、その形がもつ動物的な印象について伺ってみました。

e0102155_1825774.jpg河井 『私の曽祖父は〜作品は生きているか、そうでないか、それだけなのだ。〜と言う言葉を残していますが、私が作品に向かうべくはまさにこの一言に尽きるところです。と言ってもそれが意図的であればそんなものは砂のように手からこぼれ落ちてしまいます。生きたものとは、対象と正面から向かいあってはじめて生じる何かであるような気がします。形が生き物的ということでなく、作品を通して何か触発されたり、それがどこか喜ばしいことにつながることが重要だと考えています。』

意外にもその形は“作る”のではなく、その時その時に真剣に作品と向き合い、河井さんから“生まれて”きているようです。
例えば、医師が患者と向き合う時、設計士が図面と向き合う時、料理人が素材と向き合う時、親が愛をもって子をしかる時…。私たちの日常にもきっとそれに似た時があるはずです。だからこそ河井さんの作品からは、肌に触れるような実感、生きている感覚が伝わるのかもしれません。
また、その造形に関しては私たちの想像におよばない独特の世界をお持ちで、“想像にない”事が限り無い興味を抱かせます。

突飛な質問を投げかけてみました。
田中 『焼物が例えば戦争などでできなくなったらどうしますか?』
河井 『私は今、土を扱っていますが、たまたまそうであると感じることもあります。焼物ができなくなったら…、何か探します。』

 河井さんが『向きあう事』『生きたものを生み出す事』は方法や状況は関係ないのかも知れません。ぶれない人だ。またそれは、寛次郎さんの心根に、ある部分重なっているようも思えます。

e0102155_1832930.jpg田中 『寛次郎さんは沢山の言葉を残されていますが、一番好きな言葉はなんですか?』
河井 『寛次郎の言葉というのは、偽りのないありのままの野草のような力強い生命感を感じさせてくれます。
「今日はこんな言葉をもらったよ」という謙虚な屈託のなさに、私はどこまでも素直でありのままな人間をしみじみと感じます。私は言葉というよりは寛次郎の言葉の根底に根ざしているものが好きなわけであって、言葉のひとつが必ずしも重要ではないのですが…
『何という今だ。今こそ永遠』
という言葉ひとつ。何という言葉でしょうか。』

 殺伐とした今の世の中。もっとゆっくりでいい。色んな形があっていい。謙虚で優しくいたい。そう感じさせられます。
 どんな時でも、どんな対象であっても、今、向きあいそして謙虚に受け入れ心で感じる。
河井さんが揺るがず、流されず、動じなく感じるのは、きっと目の前の今を愛しんでいるからかも知れません。会場に並ぶ作品もきっと1つ1つ、河井さんがその時真剣に向きあった作品です。生まれ得た作品をどうかご来廊のお客様にも心で感じていただきたいです。

河井さんの作品は生きている。少なくとも私どもはそう感じています。

田中 『今後の展望は?』
河井 『特にありません。作品をつくります。』


●第3回 河井創太 陶展
平成19年3月15日(木)〜28日(水)(最終日5時まで)
※作家在廊予定日・・・3/15(木)、16(金)、17(土)、26(月)、27(火)、28(水)


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